先日の「交信終了」なおばあちゃんが、私のチームに移ってきていた。
どうも、私のスカウトに応じてくれたらしい。(笑)
申し送りが終わって一回目のラウンドの時、何処から出てるんだろう?というような声で
「あぁ〜のぉ〜ねぇ〜?氷枕、替えてくださるぅ〜??」
補聴器はずしているから、ものすごく大きな声。。(^^;)
もちろん、こちらからの声は届くはずが無いと判断し、大きく頷くオーバーリアクションで返答する・・・。
交信完了♪
その後、朝まで静かに、穏やかにお休み頂いた。
朝、洗面と歯磨きのお手伝いをしようと、おばあちゃんを起こす。
2人部屋で、隣は「植物状態」の患者さんなので、会話で交信出来るのはナースのみ。
最初に隣の患者さんの経管栄養を開始してから、おばあちゃんに交信を挑んだ。
おが:「○○さ〜ん!おーはーよーう〜!!」
○○:「はぁ〜〜〜???」
こりゃ、全く聞こえていないらしいぞ??
おが:「あーさーでーすーよーーー!!」
わずかに聞こえる右の耳元で、大きくゆっくり話しかける。
○○:「あさぁ??はぁ、朝ですかぁ??おはようございますぅ〜」
おが:「補聴器、つけましょうねぇーーー!」
○○:「はぁ??調子は悪くないですよぉ〜」
( ̄□ ̄;)ガーン。。。聞こえてない!
今度は、自分の耳を引っ張って補聴器の意味をアピールしてみる。
おが:「ほーちょうーきーーー!!」・・耳、痛いぞー!(;^_^A
おばあちゃんは、大きく目を見開き・・・
○○:「あぁ、補聴器ねぇ??」
そうそう!早く補聴器つけて「交信」スムーズにしようよね♪
○○:「補聴器つけると、機械の音で、頭痛くなるから、しません」
llllll(- _ -;)llllll
補聴器・・・したくないの・・??(^^;)
しょうがない・・・。
オーバーリアクションと、大声・大口でトライするしかないのけ??
おが:「はーみーがーきー、しましょーーー!!」
タオルで顔を洗うポーズと、歯ブラシの格好をしてみせる。
○○:「あぁ、顔ねぇ??はいはい♪」
おが:「ほっ♪」(*^^*)
○○:「歯磨きは、できませんよーー!入れ歯だから・・・」
おが:「( ̄□ ̄;)ガーン・・・いーれーばーは、あーらーうーかーらーー!出して!」
ゼーーゼーー・・・(^^;)
おが:「うーがーい!!しましょう!!」
蒸し暑い朝である。
既に汗ばんで来たよ。。。(^^;)
起床して、朝の散歩を始めた患者さん達は、病棟中に響き渡る私とおばあちゃんの交信を、横目で見ながら通り過ぎて行く。
廊下を通る患者さんと目が合う度に、苦笑いしながら会釈を返す私。
その後、男性の大部屋をラウンドした時、何故かいつもより大声になってしまう私に、一人の患者さんが、こう言った。
「俺達は、ちゃんと聞こえるよ」
「しかし、面白かったなぁ。。。パントマイムみてぇだったもんなぁ」
「おがちゃん、息切れしてたもんなぁ」
○○さん。。。お願いです。
交信中だけでもいい・・・補聴器、つけようよー(^^;)
1週間程前に入院して来たおばあちゃんの話です。
肺炎と心不全で入院して来たそのおばあちゃんは80も後半。
一人暮らしの気丈なおばあちゃん♪
80ともなれば、これまで数々の病気とお友達。
お菓子の缶に数十種類の飲み薬と、糖尿病の為のインシュリン注射と共に入院して来たの。
耳が遠くてねぇ。。。補聴器もつけてるの。
入院初日。
膨大な数の飲み薬と戦う担当スタッフを手伝いながら薬の整理をしていたの。
主治医になった医師も、この薬の量に唖然・・・。
結局、ほとんどの薬を中断し、血糖を調べながらの治療をする事になったの。
しっかりしたおばあちゃんなので、持参した膨大な薬の山は、本人に返す事にした。
その旨の説明と、これからの予定を説明に病室を訪れた私。
おばあちゃんは、点滴に囲まれうとうとしていた。
おが:「○○さん?お持ち頂いたお薬は、当分中止しますね?」
患者:「はぁ、そうですかぁ」
おが:「飲み始める時には、又、説明しますからね?」
患者:「はい、わかりました」
おが:「んじゃ、この薬は一度お返ししますね?ロッカーに入れておきますよ?」
患者:「はい」
私は、引き続き血糖の検査がある事、その値に合わせてインシュリン注射を実施する旨を説明し始めた。
おばあちゃんは、自分で血糖を調べる器械も持参しており、自宅でも測定していたのだ。
おが:「それから血糖を調べる器械ですけど・・」
(・_・?)ハテ?反応が無いよ??
薬をしまう手を休めベットを見ると、おばあちゃんは補聴器をはずし、眠っていた・・・。
ありゃ・・・交信終了ですかい??(^^;)
そうよね?
具合が悪くて入院して来たんですもんね?
はい!解りました♪
この次、目が覚めた時に説明しましょうね♪
ステーションに戻り、担当ナースに報告する。
おが:「途中で交信終了されちゃった♪」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昨日、少し元気が出てきて食事も摂れるようになったおばあちゃん。
声にもハリが出てきたよ♪
丁度、おばあちゃんの隣のベットは、手術の患者さんが入る予定だったの。
夕方6時頃、手術が終わり、手術室に迎えに行く時。
患者さんのベットを取りに病室に入った婦長と私。
ベットを廊下に出そうとしていると、おばあちゃんが何か言っている。
患者:「デシ!!デシッ!!」
おが:「(・_・?)ハテ?」
患者:「デ〜ッシ!デシッ!!!」
何、気合を入れているんだろうか??
でも、右手が何かを探しているのよね・・・。
おが:「○○さん?なぁ〜に??」
患者:「デシッ!」
おが:「デシ??弟子・・じゃぁ無いよねぇ?
おばあちゃんは、やはり補聴器を付けていない。
その時、閃いたように婦長が・・・
婦長:「ティッシュ・・・じゃない??」
おお!!なるほど!!
ティッシュ箱を渡してみると、おばあちゃんは大きな声で・・・
患者:「あ”〜!!ありがと!!」
そして、箱を抱きかかえて「交信終了」♪
あはっ♪8(^_^)8
かわいいおばあちゃん♪
又、ナイスなキャラの登場に、ワクワクしちゃうおがちゃんなのでした♪
昼過ぎ、私は薬局へ向かっていた。
患者さんに使用する「麻薬」を取りに・・・。
薬局で請求伝票と数を確認して、麻薬を持って病棟に変える途中の出来事だった。
私の両手には、麻薬の他に沢山の薬の山が・・・。
レントゲン室の辺りまで来た時、レントゲン室から技師さんが一人出て来た。
私は、何故か人の前を歩くのが好きでは無い。
無意識に技師さんの後ろについて歩いていた。
向かいからは、大勢のドック検査の患者さんが列を成してやって来た。
廊下はその患者さんで一杯だ。
私は、自然に廊下の右端を歩く形になった。
廊下の曲がり角には、一箇所トイレがある。
私の前を歩いていた技師さんが、ごくごく自然にそのトイレに入った。
もちろん男子トイレである。
突然、技師さんが歩みを止め、振り返った。
(。。?) ( ̄□ ̄;)ガーン
ふと、我に返った私が見たものは、困惑した技師さんの顔。
llllll(- _ -;)llllll
おが:「あ・・・すみません・・つい・・」
技師:「・・・はぁ・・・」
おが:「患者さんをよけてたら、つい・・・」
技師:「ここ(トイレ)に用事・・・じゃぁ、ないんだよね?」
おが:「・・・はい・・失礼しましたぁ・・」
そうだよね?
絶対に変に思われたわよねぇ??
後ろにピッタリくっついて来て、トイレの中まで入って来られたら・・・。
あ!でもね?
決して変な気持ちなんか無かったんだからね?
お弁当食べて、お腹が一杯で、ちょっと眠かっただけなんだからね?
6日間、お休み無かったから、眠かったんだからね?
ダメ??
理由にならない??(;。;)
昨夜は準夜勤務。。。
申し送りが終わって、担当病室に挨拶に出向く。
Oさんは感染症の部屋に居る為、4人部屋だが個室状態。
広い部屋に、たった一人。。。寂しいのは当たり前だよね?
おが:「よっ!!\(^o^)」
廊下から右手で敬礼しながら病室に入るのが、Oさんの病室に入る時のポーズ。
O:「おぉ〜!(^o^)」
Oさんは、ベットから首だけ持ち上げて右手で敬礼して返してくれる。
このやりとりから、私とOさんの8時間が始まるのだ。
おが:「まぁ〜た、ご飯食べなかったんだってがぁ??」
O:「んだ!」
偉そうにうなづく彼。
おが:「何偉そうにぃ〜!!(〇`ε´〇)
自慢出来る事でないっちゃ??」
O:「美味ぐねぇんだもん♪(;^_^A 」
テーブルに残った栄養補助食品に氷を入れ、ストローを刺してあげると一気に飲み干すOさん。
そうだよね?
いくらセットされたって、寝たまま水ものを飲むのは辛いよね?
テーブルの上を拭いて、ごみをまとめていると、Oさんはこう言った。
「あのやぁ。。。そこの花、あそこのテーブルに置いてけねがぁ??」
ん??花???(。。?)
確かに窓の傍には、花のかご盛りが置いてある。
誰かのお見舞いなんだろうな?
Oさんが寝ている場所からだと、丁度見えにくい場所だ。
自分から見える場所に移動して欲しいんだろうか?
でも、これまでも花のお見舞いは何度もあった。
それは全部、自分のテレビの上やテーブルの上に飾っていた筈。
何故、空いてるベットのテーブルをわざわざ指定するんだろう?
そう思いながらも、花を移動する。
花がキレイに見えるように、向きをOさんの方に向けると・・・。
「そうでなくてさぁ・・・。そっち向げでけろ」
そっちぃ??壁の方じゃないか??
あっ!!!解った!!!
Oさんが指定したベットは、Yさんが寝ていたベットだ!!
Yさんに見せたいの??
おが:「Oさん!もしかして・・Yさんに??」
O「・・・コクリ」
はにかみながらうなづくOさん。
(;。;)(;。;)(;。;)
Yさんの旅立ちを知らないで見えたお見舞いの方が、Yさんにと置いていったらしいのだ。
馴染みの薄い土地で旅立ったYさんには、家族以外の面会は、ほとんど無かった。
そんなYさんへの面会を、Oさんはとても大切なものに思ってくれたんだろう。
ありがとう♪Oさん♪
きっとYさんは、この花を見てくれてるよ?
今日もOさんの担当。
相変わらず身体を動かすのは最低限のOさん。
笑顔は戻りつつあるものの、まだ気力は戻っていない様子である。
仕方ないよね?
あんなに辛い思いをしたんだもの・・・。
少しづつ、元気になろうよ!ね♪
傷と床ずれの手入れが済んだ頃、奥さんの面会があった。
お腹の調子と、傷の痛みを気遣う奥さん。
今朝は大きな花火のような「おなら」が出ている事を話して安心して頂く。
車椅子に移しお昼の準備をしていると、奥さんがこう言った。
「おがちゃん!聞いてくれる?
この人ね?外出した時、仏壇にお線香あげるでしょう?
着いてすぐと帰る寸前の2回あげたんだけど、Yさんの分も!って言って
5本もあげてたんだよ?」
Yさんは、Oさんが3ヶ月病室を共にして先日亡くなった患者さんの事である。
病室を離して見送ったYさん。
彼が亡くなった事実をOさんに隠し続けた私達。
でも、それを察知していたOさん。
外出に出かける時、私はOさんに耳打ちしたのだ。
「Yさんともちゃんとお別れして来てね?」と・・・。
Oさんは、お別れがしたかったんだと思う。
私達より何十年という人生経験を積み、戦争時代をくぐって生きてきた大先輩だよ?
人の生き死にも、沢山経験して来ているんだもんね?
難聴がひどくて、ほとんど会話を交わす事も無かったYさんだけど、
お互いの気持ちの交流があったんだよね?
朝、ブラインドを開けようとすると、怒ってその手を遮るYさんの行動に
「眩しいからまだ開けるな!って言ってるんだよ」
と代弁してくれてたもんね?
奥さんが帰った後、私はOさんに聞いてみた。
「外出してみて、何が一番良かった?」
Oさんは、こう答えた。
「我が家の空気が吸えた事!
孫が走るとこ見れた事!
あとはなぁ。。兄貴とYさんに線香あげられた事だなぁ・・・。」
そして、笑いながらこう付け加えた。
「又、行くべぇ??」
うん♪又、行こうね♪
祭りのリーダーであるOさんは、最近めっきり元気が無い。
もうすでに1年を超える入院。
最近、たった一人のお兄さんを亡くし、葬儀に参列出来ない自分を責め・・。又、身内を亡くした事への気落ちは計り知れないものがあった。
そんな中、同室の祭りのメンバーの一人が追い打ちをかける様に亡くなったのだ。
その彼の臨終は、Oさんの事を考え病室をかえて見送り、Oさんには「病状が安定しないので他の病棟に移った」と説明していた。
でも、Oさんは察していたのだ。
そんな折、お兄さんの新盆に合わせ外出の許可が下りた。
でも、Oさんは全く生気を失い、食事はおろかベットから起きる事すらしなくなっていた。
それでも家族の説得に応じ、今日、外出の予定となっていたのだ。
お兄さんと同室者の臨終から、ただでさえ無い食欲は益々低下していた。
その為、ただでさえ便秘勝ちなOさんのお尻は頑固さを増していたのだ。
3日程前から夜中にかけての浣腸希望があったらしいのだが、情けないナースもおり、その希望を叶えてくれなかったらしい。
今朝、彼のお腹とお尻は、悲鳴をあげていたのだろう。
朝食をとる事もせず、一人でトイレにこもっている始末。
そんな彼を発見した私。
すまない気持ちで一杯だった。
せっかく外出する日なのに、どうして?
すぐにトイレに向かい、彼のお尻を探索する。
がちがちに固まった「祭り」の根源が、彼を苦しめていたのだ。
浣腸を少しづつかけ、指で敵を砕き、又浣腸!!
「お兄さんに会いに行くのに、こんな塊は置いていかなくちゃ!」
と彼を励まして・・・。
密室での「祭り」である。
敵を玉砕し、病室に戻る。
傷の手入れを済ませた所に、家族が向かえに来てくれた。
無精ひげを剃り、1年ぶりに私服に着替え、やっと微笑みの戻ったOさん。
車椅子での外出が叶った。
5時間という短い時間だが、彼にとってはカケガイの無い時間を自宅ですごし、夕方帰院。
彼はいつもの笑顔で帰って来てくれた。
「ちゃんとお別れして来たぞ」
疲れただろうに、穏やかな笑みを浮かべてくれたのだ。
排泄。。。人間の基本的欲求。
それを満たす事が、どんなに大切な事なのか?
あまりに地味な仕事かもしれないが、私は大切にしたいと思う。
どんなに高度な知識や技術を見につけても、患者さんは、人間は満足してはくれない。
人として大事な事。。。
それを忘れたくないと強く感じた。
珍しく残業無しの帰宅。
悠々とバスでの帰宅。(●^o^●)
こりゃ、さっそくミューの散歩でも行くか!と意気込んでの帰宅だった。
ルンルン気分で玄関にたどり着き、玄関のドアを開けようと・・・。
(・_・?)ハテ?
どんなに探しても、自宅の鍵が見つからない!(^^;)
玄関の地べたにしゃがみこみ鍵を探索する私。
家の中では、人の気配にミューが吠える。
(静かにしてよ〜!今、中に入るからぁ〜(^^;))
しかし、バッグの中身を空にしても、鍵の姿は何処にも無い!
(^^;)(^^;)(^^;)・・・・。
もしや、病院のロッカーの中??
いや!病院で自宅の鍵を出す用事など無い!
って事はぁ〜??
最初から持って出なかったんだいが?
腰痛くんは帰っているだろうか??
もし、居なければどうしよう??
近くのコンビニで時間を潰すしか無いか??
そうだ!!
チャイムを鳴らしてみよう!
♪ピンポ〜ン♪・・・・シ〜〜〜ン・・ワンワンワン!!
(^^;)(^^;)・・・だからぁ〜。あんたはいいんだってばぁ〜(^^;)
もう一回!♪
ピンポ〜〜ン♪・・・ワンワンワン!!
「うるさい!!吠えちゃダメだって!!」
(・_・?)ハテ?吠えちゃダメ??
って、腰痛君、居るんかい??
んじゃ、電話作戦だ!!
バックから携帯電話を取り出し、目の前の自分の家に電話する。
トゥルルルゥ〜♪カチャ!・・「只今、留守にしております」・・・
留守電じゃんかぁ!!出ろよ〜!!
仕方なく、私は自分ちの留守電に向かって話しかける。
おが:「もしもし?開けてぇ〜〜(^^;)」
カチャ♪(腰痛君が電話に出た音)
腰痛:「はい??」
おが:「あ!!私!開けてちょうらいませ♪」
腰痛:「なにぃ〜?今、何処?」
おが:「玄関!」
腰痛:「何処の玄関?」
おが:「自分ちの玄関だってばぁ〜!」
腰痛:「なんで??」
おが:「なんでもいいから、早く開けてよ〜!!」
隣のおばさんが夕飯の支度をしながら、怪訝そうにこちらを見ている。
玄関先でバッグの中身を全部出し、腰を屈めて携帯してる自分が情けない。(;。;)
パタパタと足音がし、玄関のドアが「カチャッ!」と開いた。
そこには、電話の子機を耳にあてたまんまの腰痛君。
腰痛:「なにしてんの?」
携帯電話を耳に当てたまま答える私。
おが:「鍵、忘れた」
尚も電話の子機で話す腰痛君。
腰痛:「だから、朝、忘れ物無いか?って聞いたべぇ??」
おが:「忘れたもんは忘れたのっ!(〇`ε´〇)」
後ろ手にドアを閉め、家の中に入っても尚、お互い電話は耳に当てたまま・・・(^^;)
はたと気がついたのは、尻尾をふりふりのミューを見た時だった。
今朝、出勤すると、経過の長い患者さんが亡くなっていた。
以前の日記にも書いた患者さんだが、自分の死期を悟ったかのような旅立ちだった。
ほとんど老衰に近く、眠るような最後だったそうだ。
苦痛が少なかったのが幸いだと思う。
色んな患者さんを見ていると、自分の命の限界を身体で感じ取る方が多い。
数年前、こんな体験をした。
50代の女性。大腸癌の末期。
いわゆる「看取り」の患者さんである。
手術の甲斐なく、トイレにたつたびに「血便」が続く。
でも、彼女は「死」を恐れなかった。
もちろん、病名は知らされず、治ると信じていたのかもしれない。
ある日のシーツ交換の日。
彼女の布団の丁度首にあたる部分に「10時」と青いボールペンで書かれているのに気がついた私。
「これなぁに?」と問う私に、含み笑いで言葉を濁す彼女。
発熱と血便が続いていて、時々おかしな事を話す事もあったので、夢うつつの行動かと思っていたのだ。
それから数日後の深夜勤務。
彼女の体力も限界に近づいていた。
一歩も動く事の出来ない彼女は、発熱にうなされながらも介助でトイレに降りると言う。
両脇から身体を支え、トイレの介助をする。
ベッドに戻った彼女が、突然、こう言った。
「ネギは刻んでタッパーに入れてね?」
(・_・?)ハテ?夢の世界にいるのか?
彼女に合わせて、私はこう言った。
「そうだね?刻んでおくと便利だよね?」
すると彼女は、ふとわれに返り「何言ってんの!」と表情を強張らせた。
その後、どうしてもお気に入りのパジャマに着替えたいと言い、彼女の希望のパジャマに着替え、又浅い眠りについた。
ほどなく時は過ぎ、朝の申し送りの時間を迎える。
申し送りが終わり、私は、ふと気になって彼女の病室を訪れた。
彼女は眠っているかに見えたが、呼吸は止まる寸前だった。
主治医をコールし、家族を呼び、彼女はそのまま目を覚ます事は無かった。
死亡確認の時、主治医は自分の腕時計に目をやり「9:58、死亡確認しました」と、家族に伝えた。
しかし、主治医はすぐに私の腕時計を覗き込み「あ、10時です」と言い直したのだ。
ステーションに戻り、主治医の行動に違和感を持った私は、何故、時間を言い直したのか問いただした。
主治医は、「何だか解らないけど、・・・」と。
その後、彼女の死後の処置をしに病室に入り、背筋が凍る思いをしたのだ。
そう!
あの布団だ!!
胸元に「10時」と書かれた布団。
あの「10時」を発見してから、一度はシーツ交換があった筈。
でも、彼女は、布団だけは交換したくないと言ったらしいのだ。
彼女は「10時」にこだわる何かがあったのだろう。
10時に旅立つ準備をしていたのかもしれない。
ちゃんとお気に入りのパジャマに着替えて・・・。
あれは、10年程前の事。
就職して生活も安定し、私は新しいアパートに引っ越した。
そのアパートでは、なんとも不思議な経験が待っていたのだ。
真夜中2時に決まって起きる感覚・・・。
どんなに熟睡していても、必ず2時に目が覚めるのだ。
そして、目覚めた時には必ず身体が硬直している。
そう!金縛りだよ。
連日のこの不思議な体験にほとほと疲れた私は、ある日、一つの決心をした。
「対決」だ!!( ̄^ ̄)
その決心を固めるに至った経緯は、日毎「相手」の行動がエスカレートしたからだ。
最初は、私が寝ているベットの傍らにたたずむだけだった彼女。
そう、彼女なのだ。
長い髪に、白い着物姿の女性なのだ。
顔には髪が垂れていて、はっきり表情は解らない。
でも、明らかに「好意的」な存在では無かったのだ。
彼女は、次第に私の身体の上に馬乗りになるようになった。
最初は足元に立つ位だったが、だんだん、腰、お腹、胸と上がって来ていたのだ。
そして数時間、じっと私の顔を睨むように時を過ごすのだ。
ある日、彼女は私の首に手を掛けて来た。
どうにも我慢出来なくなった私は、「出てけぇ〜!!」と、心の中で叫んだ!
やばい!!やばいですよ?
絶対に今夜も彼女は来る!!
「出てけぇ〜!」位でひるむ相手じゃない!
その夜、私は対決を覚悟して床に就いた。
2時。。。
ハッ!と目覚めた私の身体は、指一本動かない!
彼女はすでに私の首に手を掛け、体重を乗せてくる。
ちょっとでも身体が動けば、少しは時間が稼げるのに・・・。
「一体、私に何の恨みがあるの?」
「私はあなたの事を、全くしらないんだよ?」
「私に何か言いたい事があるの?」
「私があなたにしてあげられる事は、何も無い!」
「迷惑だから出てって!!(〇`ε´〇)」
そう心の中で唱えた瞬間、身体が軽くなった。
彼女の姿は、すでに無かった。
時計をみると、4時。
げげっ!2時間も対決してたんかい??(^^;)
それから彼女の姿が現れる事は無かった。
それにしても、話の解る人(?)で良かったわい!
後で霊感の強い友人に聞いた話。
「あのアパート、何か無かった?」
おいおい(^^;)!
気づいていたんなら、さっさと教えて欲しかったわよ!(〇`ε´〇)
今日は、遅番勤務さ。
11時に出勤して、半日勤務のスタッフから残った検査の引継ぎを受けて・・・。
今日は、月曜日とあって入院も多かった。
入院の患者さんの採血や検尿を検査室に運ぶ仕事が残っていたの。
採血はお昼前にするので、半日さんが提出してくれたんだけど、検尿はすぐには揃わない。
「いいよ〜。揃ったら提出するからぁ」
気軽に半日さんに声をかけた私。
12:30頃、検尿の検体が揃った。
両手にゴム手をはめ、検尿を運ぶ。
階段を下りようとした私の前を、一人の医師が歩いている。
循環器のたった一人の女医さんだ。
指示を書き終え、お昼に向かうんだろうか?
彼女は、私より階段5段位先を歩いていた。
声を掛けようかと思ったが、彼女の歩調は意外に早い。
階段を下りる振動で、検尿が「チャプチャプ」揺れる。
せっかく患者さんが搾り出した大切な検体。
こぼしてはならん!( ̄^ ̄)
右目は検尿、左目は女医さん。。。
非常に危ないバランス関係・・・。
私の歩調が階段の踊り場に差し掛かった時、微妙なコーナリングに、検尿コップの中の水位が悲鳴をあげた。
「チャプ〜〜〜〜ン♪」・・・・。
ガーーーーーーン!!Σ( ̄□ ̄; !!
検尿コップが上げた悲鳴が、一滴の水滴をもたらした。
その一滴の水滴は、ゆっくりと弧を描き・・・・。
女医の白衣の右肩に・・・ポトリ・・・( ̄。 ̄ )...
本当に一瞬の出来事だった。
私は、女医に声を掛けるタイミングを逃した事に感謝した。
T先生・・・。ごめんなさいね♪
毎日、暑くて汗かくから、白衣、早めに交換しようね♪